東京都は、今年度で終了する「東京都食品安全推進計画」の改定案をとりまとめ、2009年12月25日~2010年1月15日、都民・事業者から意見を募集しましたので、東京都生協連は、1月12日付で下記の意見を提出しました。
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2010年1月12日
東京都福祉保健局
健康安全部食品監視課御中
東京都生活協同組合連合会
「東京都食品安全推進計画(案)」に関する意見
東京都における食品安全確保に向けて尽力されておられることに敬意を表します。
「東京都食品安全推進計画(案)」(計画案)に記載されている施策群については基本的に賛同いたします。また、食品安全審議会の答申に比べて、用語の説明や図表が充実していることも、都民の食品安全に関する理解を深めると思われ、歓迎するものです。以下、戦略的プランのいくつかに関して、具体的施策の展開において配慮されたい点につき意見を述べます。また、具体的施策にあっては数値目標を設定し、進捗管理することを望みます。
1.GAPと生産情報提供食品事業者登録制度の推進について
農産物の生産工程を管理し安全確保を図るGAPを普及させることに賛同します。ただし、農水省も国版のGAPをすすめており、それとの整合を図りつつ促進していく必要があります。また、都内に流通する農産物生産県との情報交流をすすめ、GAP制度の充実を図ることも重要です。
生産情報提供食品事業者登録制度についても同様のことが言えます。都内流通食品の生産県における制度を把握して連携をすすめることが求められます。
2.事業者が取り組む自主的な衛生・品質管理の推進について
食品衛生自主管理認証制度は、事後的な食品安全・衛生の確保から、事前の予防的な施策に転換させる点で、きわめて重要な制度であると考えます。しかしながら、この制度はほとんど普及していない実態にあり、都民の多くも制度の存在すら知らないと思われます。計画案が事業者・都民への周知・普及をすすめることに重点を置いていることは、このような現状を改善するものとして歓迎します。
さらに普及をすすめるために、自主管理認証を取得している事業者をサイト上で公開することや、零細事業者に対する認証費用の助成なども導入すべきです。
3.緊急時における危機管理体制の整備について
計画案は、危機管理体制を充実させるために、関係機関の連携強化、マニュアルにもとづく訓練の実施、緊急時の情報の収集・発信などを掲げています。これらの施策・事業は、輸入冷凍餃子事件などのこれまでの教訓を踏まえたものと捉えられ、ぜひとも積極的に展開していただきたいと考えます。
この点について、これらの施策・事業が行政機関の内部の対応にとどまっていることは、いささか狭い対応であると考えられます。危機に関する情報は行政のみならず事業者にも寄せられ、その初動における情報発信・処理が決定的に重要であるように、行政と事業者の連携を欠くことができません。そのためには、事業者との連絡協議の制度化、事業者に対する講習会、事業者と行政とが一体となった訓練などを実施することが求められます。事業の実施に際しては、この点に配慮されたいと考えます。
4.食品安全に関する情報収集と評価について
食品安全に関する情報収集と評価は、東京都食品安全条例が掲げる施策の特徴のひとつです。この条項を生かして、都民が不安を抱く食品等について、幅広く食品安全情報の収集・評価を行っていただきたいと考えます。一例をあげれば、戦略プラン5「『健康食品』による健康被害」に関連しますが、健康食品の健康被害について、物質そのものの安全性だけでなく、使用法(複数の物質の併用を含む)に関係する安全性などについても、評価をすべきです。
5.食品表示に関する知識の普及と適正表示の推進について
適正表示推進者の育成は、重要な取組みであると考えます。育成者講習会およびフォローアップ講習会を通じて、適切な表示を推進する核となる人材の育成することに賛同いたします。また、食品表示に関する正しい知識の普及に関して、都民を対象とした表示学習会の開催がスケジュール化されておりますが、実際の開催に当たっては広く消費者団体からの意見を受け入れて進めることを希望します。
6.食に関するリスクコミュニケーションの充実について
リスクコミュニケーションは、リスク評価・リスク管理と並んで、リスク分析(またはリスク・ガバナンス)における要素のひとつであり、消費者が参加するという点からはもっとも重視されるべきプロセスです。
前期計画においても、リスクコミュニケーションが重要項目として掲げられましたが、その事業の事後評価を通して、効果的なリスクコミュニケーションの姿を抽出していくことが必要であると思われます。有識者や一般の都民が参加する検討会を設置して、より有効なリスクコミュニケーションの方法について検討をすすめ、具体的な事業に生かしていくべきであると考えます。
以上