2011年2月15日
東京都福祉保健局 御中
「平成23年度東京都食品衛生監視指導計画(案)」に関する意見
東京都生活協同組合連合会
食品安全行政の充実に取り組んでおられることに心から敬意を表します。
標記の計画案について、当会の意見を述べます。
1.食中毒等健康危機管理の着実な実施について
「第5 監視指導の実施内容 2 重点的に監視指導を実施する事項 (2)食中毒対策 オ 食中毒等健康危機管理の着実な実施」の「大規模食中毒等の発生を想定した机上シミュレーション研修を実施」することに賛成いたします。しかし、その実施目的が「食品衛生監視員の食中毒発生時の対応能力の向上を図る」というだけでなく、一歩進めてクライシス・マネジメントまで視野に置いた取り組みを求めます。2008年1月に発生した中国産冷凍餃子事件の発生は、たんなる食品安全(food safety)を超える「食品防御」(food defense)という課題を提起しました。その観点から、製造・流通過程の監視、品質管理の飛躍的な向上のほかに、このような事件が発生した際のしっかりしたクライシス・マネジメントが課題となっています。緊急時において的確な情報を都民に速やかに提供していく態勢の整備をより充実させることを求めるとともに、関係行政機関だけでなく、事業者も参加するクライシス・マネジメントの訓練の実施を求めます。
2.重点的に監視指導を実施する事項について
特に重点的に監視指導を実施するとして、輸入食品対策・食中毒対策・食品表示対策の3つの事項を掲げております。その数値目標に関して、平成21年度、22年度では一覧表が作成され見やすくなっておりましたが、今計画ではそのようなものがありません。また、食中毒対策・食品表示対策に関しては本文で数値目標を設定しておりますが、輸入食品対策では「数値目標」が設定されておりません。各項目別-残留農薬・遺伝子組み換え・食品添加物・放射能等-の数値目標を設定すべきと考えます。
3.食品安全に係る関係者相互間の意見交換(リスクコミュニケーション)について
リスクコミュニケーションの具体的な取り組みとして「食の安全都民フォーラム」、「食の安全調査隊」が掲げられ、また、「新たなリスクコミュニケーション手法の充実」を図ることも盛られております。これらは平成22年度計画と同じものであり、「新たな」という表現が、2年続くことに違和感を持ちます。新たな手法として「東京都食育フェア」の活用や「ホームページでの啓発」等を設けるなど検討することを求めます。
また、リスクコミュニケーションについて、わかりやすい手引書を作成し、特別区、八王子市及び町田市と連携しつつ、都内の保健所単位における実施計画を作成し、積極的に実施されるよう求めます。
4.事業の有効性に関する検証などについて
例年指摘しているところですが、計画は前年度の事業実績の事後評価を行ったうえで、策定されるべきものです。速報値を6月までに概要として取りまとめ、公表されるとのことですが、どこかの時点で区切り、対前年進捗、対計画比進捗等について公表されることを求めます。また、前年実績を踏まえた計画の柔軟な見直しもすすめるべきです。
5.食品衛生自主管理認証制度について
食品衛生自主管理認証制度は食品の安全確保にとって大変に意義のある制度ですが、なお、普及率が低い状態にあります。それは、この制度が一般の消費者にあまり知られていなく、事業者側にとっても経済的なインセンティブが弱いことに起因していると考えられます。認証取得事業者についての広報をはじめとする制度に関連する情報の普及をいっそう図るとともに、小規模事業者に対して認証費用を助成するなどの大胆な促進施策を講じるよう求めます。
6.計画の性格と目標の設定などについて
食品安全基本法の制定にともなって、食品衛生法は基本法の個別法と位置づけられ、食品衛生行政は広義の食品安全行政の一分野となったと考えられます。厚生労働省の食品衛生監視指導指針が、監視指導計画は必ずしも狭義の食品衛生監視指導に限定せずに、計画策定者が食品安全確保施策についての追加的な項目を計画化できるとしているのも、このような食品安全政策の体系化を受けているものと理解できます。
東京都は一方で、食品安全条例にもとづき、5年間の食品安全推進計画を策定しています。当然ながら、食品安全計画にはこの監視指導計画と重複する施策が多数掲げられています。これら両者の計画を整合的にとらえるとすれば、この計画は食品安全推進計画を受けた年次計画と理解することが合理的です。
そのような観点からすると、具体性が乏しい項目があります。調査研究の対象物質の選定、食品衛生自主管理認証制度の業種別の目標および具体的な普及施策、各種講習会のテーマおよび開会予定件数その他について、食品安全推進計画との整合をとりながら、できる限り目標を掲げて具体的に記述されるよう求めます。
以上
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